コミューターの原点に立ち返り
新世代スクーターの基準を目指す
新しいフォルツァSiのスタイリングは、まさにキープコンセプトで、フォルツァであると一目見て分かる一方、目新しさを感じさせる。また、シートが低くて足着き性が良く、ライポジも快適で、収納性や利便性に優れるというシットインスクーターの魅力をそのままに、さらに進化させている。
しかし、ユーザーの価値観の変化に対応して、スマートカードキー、7速Sマチック、オーディオなどの豪華装備を廃し、実質的に15万円程度の低価格化と、9~10kg程度の軽量化を実現。そして何より、エンジン性能や操縦安定性など走りの機能を大幅に高めたものとなっている。なお、従来からのフォルツァZも併売される。
SH300iベースのエンジンを
新設計鋼管フレームに搭載する
新しいフォルツァSiは、昨秋のミラノショーで発表され、一足先にヨーロッパ市場に投入されたNSS300フォルツァの国内向き250cc版だ。
エンジンは、水冷単気筒OHC4バルブという基本形式やボア・ストロークに変わりはないが、ヨーロッパで定評を得ているSH300iのユニットをベースとしている。燃焼室形状、カムプロフィール、バルブタイミングを見直し、オフセット(エキゾースト側に5mm)シリンダー、ローラーロッカーアーム、ロングリーチのプロジェクションプラグを採用。また潤滑性向上のためピストンの条痕形状を最適化。ボアダウンだけでなく、燃焼効率向上とフリクション低減が施されているのだ。
そしてフレームは、剛性バランスの「剛」と「柔」を調和させるという新しい発想で設計され、特許出願中の画期的なパイプワークとなっている。従来のようにヘッドパイプからピボット部への剛性バランスをガセット類で調整しながら均一にまとめるのではなく、ヘッドパイプからの直線的なアッパーパイプで「剛」を得ながら、ピボット部を支持するダウンチューブで「柔」を持たせているのだ。また、SH300i同様、スイング式ユニットをオレオリンクを介してマウント、緩衝性能を高めている。
走行性能、特にハンドリングが秀逸
使えて、楽しめるスクーターだ
跨ると、シート高715mmは、従来のフォルツァZの710mmより5mm高いが、バイクの中に座りこむシットインスタイルのライポジであることに変わりはなく、足着き性も申し分ない。快適指向かつ収納性や利便性を重視した、まさにジャパニーズ・スタンダート・スクーターとも言えるものである。
ところが、車格もフォルツァZと同等なのだが、車重が軽いことの恩恵が大きいのか、明らかに軽い印象で、軽快に取り回すことができる。その点で、フォルツァZに不満があったわけではないが、この軽快さは、日常的に手軽に乗り回すにあたり、大変にありがたい。ある意味、ずっと自転車感覚に近付いた印象だ。
走り出してもハンドリングが軽快でスポーティなのだが、小径ホイールのスクーターにありがちな神経質さがない。いくらハンドリング性能が向上しても、小径ホイールのスクーターではコントロール性に限界があるものだ。もちろん、その点で、フォルツァZも優れてはいた。だが、新しいSiは、はるかに高水準化されている。いや、このカテゴリーにおいて最高水準にあると言って差し支えない。
何と言っても絶大なのが、新しい思想で設計されたフレームの剛性バランスの効果だ。リヤからの捻れを柔軟に受け止めて吸収、フロントに神経質な挙動を伝えない一方で、ステアリングからの動き、特に縦曲げをダイレクトに受け止め、安定性と信頼感を高めてくれるといった感じだ。簡単に言えば、基本的にグニャと柔軟なのだが、ガチッとしっかり節度があるというわけだ。
加えて、リヤのオレオリンクが、エンジン振動を吸収してくれるだけでなく、路面からの突き上げを最初に後方にいなしながら受け止めてくれるので、路面追従性に優れ、車体も安定している。さらに、フロントホイール径が14インチにインチアップされた効果もあろう。リヤよりも大径なので、相対的にフロントの挙動が穏やかになるので、安心感も高くなるというわけだ。
そして、エンジンが全域においてトルクアップされていて、伝達効率が向上したVマチックと軽快になった車体と相まって、小気味良くスロットルで駆っていくことができる。スポーティだし、街中からワインディング、自動車道路にいたるまでストレスがない。特に国内での使用を考えると、動力性能はこれで充分で、環境にベストマッチングとも思える。現実的に使えて、そして楽しめる。まさに、コンセプトどおりベンチマークとなり得るニュースタンダートである。
SPECIFICATIONS – HONDA FORZA Si
![ホンダ フォルツァ Si 写真]()
価格(消費税込み) = 53万9,700円
13年の歴史があるフォルツァのDNAを継承しながら、フルモデルチェンジされた軽2輪スクーター。そのキーワードは、“ジャスト・フィットなダイナミック・オールマイティ・コミューター”だ。
■エンジン型式 = 水冷4ストローク OHC 4バルブ 単気筒
■総排気量 = 248cc
■ボア×ストローク = 68.0×68.5mm
■最高出力 = 17kw(23PS)/7,500rpm
■最大トルク = 23N・m(2.3kgf・m)/6,000rpm
■燃料供給 = インジェクション
■トランスミッション = Vベルト自動無段変速
■サイズ = 全長2,165×全幅755×全高1,185mm
■ホイールベース = 1,545mm
■シート高 = 715mm
■車両重量 = 192kg
■燃料タンク容量 = 11リットル
■Fタイヤサイズ = 120/70-14 M/C 55P
■Rタイヤサイズ = 140/70-13 M/C 61P
■ブレーキ形式(F/R) = 油圧式ディスク/油圧式ディスク